不在証明
-
「アレルヤぁ」
呼ぶ声に振り返ると、ロックオンが酷く情けない貌をして立っていた。
パイロットスーツに身を包んだ姿はいつも通りで、その様に何一つ不足は無い。表情がえらく格好悪い以外は、何も欠けることなくいつも通りの彼だし、その表情だって別に見たことがないわけではなかったのだが、特に問題があるわけでも無かったのに何かが足りないように思えた。それを不思議に思いながらアレルヤは問う。
「何ですか、ロックオン?」
「ハロとられた」
殆ど泣き言のような口ぶりに、アレルヤはぷっと噴き出す。
「笑うか?!」
「笑うところでしょう、どう考えても!」
くつくつと笑いながら見回せば、確かにいつも彼とともにある球形のロボットの姿が無く、ああそうかそれが不足分か、とアレルヤは納得する。特に出撃を控えている時ならば、彼が相棒を連れていないわけがないのだ。
ロックオンは肩を落として溜息をつく。
「フェルトに取り上げられた。扱いが乱暴過ぎるから中から調整しなきゃ駄目です、ってよ」
「反省文ですかね、あとで」
「さっきまで正座で説教されてたのにか?! しかも相手フェルトだぞ、主に無言だぞ!」
「……想像つくなぁ」
それは確かに可哀想かもしれない。フェルトが。
「つか跳ぶわぶつかるわ海に落ちるわは主にあいつの自発的行動であって俺のせいじゃないだろ……どっちかっていうとAIの方に問題があるんだと思うぞ」
「って、言って、更に怒られたと」
「虐めだと思う」
はは、とアレルヤは苦笑する。フェルトらしいといえばらしい。ハロは愛されている。
そこまで考えて、アレルヤは、あ、と呟いた。
「──ってことは、今日はハロ無しですか?」
「何だよその不安気な叫びは」
「いや、別に信頼してないわけじゃないですけれども」
眇めた目で此方をみるロックオンに、慌てて首を振る。暫く疑わしげにアレルヤを見据えていたロックオンは、改めて溜息をついた。
「まぁ不安を誘うのはわかるけどよ」
「そうでもないですって」
苦笑してアレルヤは首を振る。
ロックオンがハロのサポートを受けているのは決してロックオンが無能であるからではない。そうであるのならばそもそもマイスターとして選ばれてはいない。そこに決意や理念がひとつあり、そしてそれを揺るぎなくさせる腕があること。ハロで代わりになるならば最初から総てAIに任せればいいのだ。
そう言うアレルヤに、しかしロックオンは両手を挙げてみせる。
「言うなって、俺が一番わかってるし」
「でも、本当に」
「どっちにしろ今日のプランは最初からお前のミッションのサポートでしたし。ハロが居なくても大丈夫だって、心配すんな」
「本当ですよ?」
「とちったら理由をハロに押し付けたいだけなんだっての、察しろよ?」
冗談めかして首を竦めたロックオンに歩み寄ると、小さく笑ってアレルヤはその右手に手を伸ばしてぎゅうと握る。
「信頼してますよ」
「逃げ道くれって」
「無理ですよ。何しろ今僕はかれに妬いているから」
苦笑しながらもロックオンは、左手でアレルヤの頭をくしゃりと撫でた。
なんか、書けてるんだか書けてないんだかよくわかんねぇ感じですいません(あとなんかハロロクになってなくて!)。
『アレルヤぁ』
「──どうしましたロックオン、何か緊急事態?」
『さびしい』
「え。」
『沈黙過ぎる! 寂しい! マジ無理!』
「フェルト、早くこのひとにハロ返して!」